Amazon Goのテクノロジーについて

先月発表があったAmazon Goについて、皆さんはもう既にビデオなどで概要をお知りになりましたでしょうか。まだビデオを見たことがない方に簡単に説明すると、Amazonが取り組んでいるのは新しい売場体験で、具体的には商品を手に取り自分の鞄に入れそのまま退店することが出来る(レジに並ぶ必要がない)というものです。同社は4年前からこの店の開発を始め、いよいよ今年2017の第一四半期には一般消費者にも利用できるようになるようです。

日々小売業界におけるシステム改良やテクノロジー導入について考えられている皆様にとって、このAmazon Goのニュースはかなり衝撃的なものだったのではないでしょうか。そのすぐ後に発表されたローソンとパナソニックが行っている取り組み「コンビニのレジ、ロボが会計 日本経済新聞」が出遅れたものに感じられました。

さてAmazon Goにはどのようなテクノロジーが使われているのでしょうか、弊社が代理店を務めるRetail Next 社のcoファウンダーでCTOのArun Nairによるブログ投稿”The Tech Behind Concepts Like Amazon Go” がとても参考になるので是非見て頂きたいのですが英語ですし、私なりにもこのテクノロジーについて多少の意見もあるので改めて解説したいと思います。Amazon Goを実現するには以下の4点がポイントになります。

  1. お客様の来店を知る
  2. お客様が誰であるのか知る
  3. お客様がどの商品を選択したのかを知る
  4. お客様が退店したのを知る

Arunさんの意見によると、”広い意味では2つのテクノロジーが使われているのではないかということです。1つはビデオでもう1つはワイヤレス(BluetoothやRFID)です。ビデオ単体でも計算上は上記4つ全てが行える(顔認識やオブジェクト認識で誰が何を手に取ったか判別できる)ということですが、実際にはお客様の顔が変わったりサングラスを掛けていたり人数が増えてきたときに精度が低くなりますし、ビデオの死角になる場所で商品を手に取られると知ることが出来ないということが発生します。100%の精度を出すために複数のテクノロジーを重ねて使用しているのではないか”ということです。

私も以前、棚に陳列されている商品をカメラで認識してリアルタイム棚割情報を抽出しようとしたのですが、計算上は出来そうなこれ自体、実際の店舗の棚をカメラで見てみると商品の向いている角度が様々で認識が出来ないということを経験しているため、私はAmazonもそもそも商品判別にはビデオを使っていないのではないかと考えています。ごめんなさい。バーチャルカートについては見当が付いていません。

ただし複数のテクノロジーを組み合わせて100%の精度を目指すというのはかなり鋭く、正しい考えなのかと思います。僕は上記4つはこのように実現していると考えています。

  1. お客様の来店を知るのは、ビデオテクノロジーを使って可能となります。
  2. お客様が誰であるのか知るのは、上記ビデオにも描かれているようにアプリ+QRコードが使用されているようです。
    QRコードは所詮画像データなのでスクリーンショットを使用して他人になりすますことも可能となりますが、退店後に購入に関する通知をアプリ側に行うことで本人に必ず通知されるようになっているようです。
  3. お客様がどの商品を選択したのかという点は、買物途中では把握できているのか疑問です。
    手に取ったか取らないかの判別を全商品に関して行うのは非効率的なほどのセンサーが必要になるのではないでしょうか。RFIDを使って商品の移動をエリア毎に判断することは可能でしょう。
  4. お客様が退店はしたことは、入店時からビデオでフォローしているこのお客様がRFIDタグが貼られた商品をもって退出したことが把握できるので、商品購入情報をアプリに送信することが出来るようになっているはずです。

ただしこれでも計算上はうまくいくのですが実際には人は様々な動き方をしますので、実験と検証の試行錯誤を行ってAmazonでもオープンまでに4年掛かったのではないでしょうか。またメインでは使われていないテクノロジーとして、音声や重量センサーなども使用されているかもしれません。

最後に、こういったお客様に負担なく買物が出来るという点が優れた未来型の小売店は、まず間違いなく今後増えていくので日本でも同様の取り組みを始めるところが出てくると良いなと思っています。弊社でも応援できるところは応援したいです。まずはAmazon Goがオープンしたら見学に行きましょう。